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    2019年に小学5年生で1級最年少合格を果たし、以後5年連続で1級合格!
    全国順位も年々アップし、昨年は3位に。NHK福岡の「ウオカツ!」でも活躍中の
    福岡市の伊藤柚貴(いとうゆずき)さん(高校1年生)に、お話しをうかがいました。


    ―小学5年生で1級に合格、なぜその後も毎年1級受検されているのですか?

    魚のことに夢中になれて楽しいからです!
    ぼくにとってととけんは相棒のような存在です。
    全国の魚や魚食文化について広く深く知ることができる検定なので、副読本から最新のお魚情報を取り入れる過程が好きです。2023年の副読本は、魚食大図鑑と言ってもいいほどの内容で、試験関係なく今もよく読み返しています。
    合格の次は高得点を!と欲が出ていますが、まずは合格しているか毎回ドキドキしています(笑)
    受かって終わりではなく、せっかく得た情報や知識なので、魚売り場など日常生活で活用したり、誰かに話すことでもっと魚が好きになるのかなと思っています。

    ととけんを受け始めて10年以上になりますが、環境問題に関する内容が増えてきたと感じます。
    地球温暖化による漁獲される魚種の変化や、大地震の数年後の漁業に受けている影響など、知らないことや学ぶことがたくさんあるのでまだまだ続けたいです。ととけんの対策本を作るとかも面白そうですね。

    ―全国放送の「博士ちゃん」はじめ数々のテレビ番組に出演、「さかな博士のレアうま魚図鑑」も発刊され、人生(笑)が変わりました?

    何よりもまず、ととけんとの出会いが人生を大きく変えたと思います!テレビに出させてもらったり、本を出版したりしたことで、多くの方がぼくのことを知ってくれて、魚に興味を持ってくれたのが本当に嬉しいです。もっと魚の魅力を知ってほしいし、自分ももっと魚のことを知りたいという気持ちが強まりました。

    また番組などを通じて、普段なかなか行けない場所に行けたり、出会えない方と交流を持てたりすることが、自分にとっての大きな財産になっています。
    鹿児島大学水産学部の大富潤教授は小学生の頃から憧れていた先生だったので、今レギュラー番組で共演できていることが夢のようです!

    大富先生 : 大分県姫島・干しダコ

    サンドウィッチマンのお二人 :「博士ちゃん」


    ―いまレギュラー出演、ナレーションもされている「ウオカツ!」(NHK福岡)について教えてください。

    NHK福岡放送局の「ウオカツ!」は九州・沖縄の漁業を応援し、地魚の美味しさと漁師さんたちの取り組みを伝える番組です。
    こういう番組を作りたいと考案していたプロデューサーの方に、ウエカツさんこと上田勝彦先生が「福岡に魚好きで面白い子がいる」とぼくのことを伝えてくれて抜擢(ばってき)されたと聞きました。
    ありがたいことにそれからナビゲーターとして15回出演させていただき、今年で4年目になります。

    大分県佐伯(さいき) : 鶴見市場

    長崎県平戸 : 志々伎(しじき)漁協


    大分県姫島 : タコつぼ漁

    各地の漁港や市場へ行き、漁業の現場を見て、実際に漁を体験させてもらうことで、本やネットで見ていただけでは分からなかった漁業の現状や面白い取り組みなどを知ることができて、毎回勉強になることばかりです。
    漁師さん達の、海や魚が大好きで大切で欠かせないという熱い想いを知り、その気持ちがないと自然相手で大変なこともあるのに全身(ぜんしん)全霊(ぜんれい)(そそ)げないのだと強く感じます。より一層、感謝して魚をおいしく食べようと思いますね。

    またそこで獲れる魚介類を使った地域活性のための取り組みを取材したり、地元の方に教わりながら一緒に料理を作ったりもします。
    本当に楽しくていつも帰りたくない気持ちになり撮影最終日は寂しくなりますが、大好きな場所がどんどん増えているので、すごく幸せな環境にいるなあと感じます。

    ウオカツ!これまで出会った海と魚

    さらに「自分が見て体験したことを、自分の声で話したら、より視聴者の方に伝わるのでは」という意見をいただき、番組全体のナレーションまで任せてもらうようになりました。
    人に伝えるという意味でも貴重な経験だと思います。
    取材先でもいろんな方から「ウオカツ!見てるよ~」と、言ってもらえるようになったのがとても嬉しくて励みになっています。

    今は九州・沖縄地方の放送ですが、全国の方もNHKプラスでご視聴可能なので、ご覧いただけたら最高に嬉しいです!
    九州・沖縄・そしてぼくとしては全国のおいしい魚介類にも興味津々ですので、ウオカツ!におすすめの場所がありましたらぜひ教えてほしいです。よろしくお願いします!

    ―ここ3年、大分県佐伯で会場集合受検されていますが、どうしてですか?

    佐伯は本当に「魚が美味しい街」。セリや養殖場見学などのととけんイベントに参加したり、検定の前後に美味しい地魚料理を食べに行ったり、会場受検ならではの醍醐味(だいごみ)を味わえるのが楽しみで行っています。
    (左 : 佐伯の刺身盛りの魚種を当ててみてください♪ / 右 : エソのツバメの秘密はぜひお店にて!)

    地魚尽くしの刺身盛り! : 魚喜屋さん

    ごまだしうどん、エソのツバメ!? : 味愉嬉食堂さん


    合間には魚釣りをしたりして、検定と共に佐伯の海の恵みも "受けて" います。
    佐伯の魚やごまだしうどんも本当においしくて大好きなので、今年も佐伯で開催されるのが楽しみです!

    大富先生と希山愛さん : 大分県・佐伯駅

    佐伯の豊かな漁場と、観光協会の方をはじめ地元の方の優しさに惹かれて、ウオカツ!でも取材に行きたいと熱望していたら、なんとこの春、放送が実現しました!
    おすすめの場所が多くて、すでに続編がないと入りきらないくらいでしたが、佐伯のおいしい魚の魅力が詰まった回になりました。撮影もすごく楽しかったです!
    【5/17(金)放送分はNHKプラスにて 5/31(金)まで配信中】


    ―昨年、もしくはここ数年で印象に残った出題があれば、お聞かせください。

    4つの海苔巻きの写真から、きゅうりと赤貝のヒモを巻いた「ひもきゅう」を選ぶ問題が分からず(くや)しかったです。選択肢は、鉄火巻き、ねぎとろ巻き、かんぴょう巻きでしたが、すしダネや細巻きについてあまり知らないことに気づきました。
    九州ではひもきゅうもかんぴょう巻きもあまり馴染(なじ)みがなく食べたことがないので、関東方面に行ったら食べてみたいです。

    2023年 Q34 江戸前のすし屋に足を運ぶ愉しみのひとつに海苔巻きがあります。江戸では握り寿司より古く、天明年間(1780年代)生まれの海苔巻きは「かんぴょう巻き」だったそうです。
    江戸好みの "細巻き" の人気ダネ「ひもきゅう」を選びなさい。

    ©ぼうずコンニャク


    ととけんで好きなのが居酒屋のお品書きを見て地名を当てる問題なのですが、「キダコ」が熊本県天草でのウツボの地方名ということがわからないと正答にはたどり着けず、解説を読んでもこれは解けないと思ってしまいました。最近の記憶に残る最難問だったかもしれません。

    2023年 Q65 地元の市場で魚がうまいと聞いた店を訪ねると、地魚しか出さないというこだわりの居酒屋でした。魚種をヒントに所在地を選びなさい。


    ととけん合格証は宝物

    ととけんの尾山代表と : ととけん前夜祭in佐伯


    ―ととけんにご要望、注文がありましたら?

    末永く続けてください!
    特別なものではなく、「自分はととけん〇級だよ~」という話が、老若(ろうにゃく)男女問わずできるようになると嬉しいですね。より多くの人にととけんを、そして魚食の大切さ、喜びを楽しみながら知ってもらいたいです。オンライン受検も便利ですが、全国の実会場での開催も再開希望です!どうかよろしくお願いします。

    ―日本各地の魚や郷土料理などで、食べてみたい、行ってみたい、釣ってみたいものや場所がありますか?

    ぼくは福岡県に住んでいて、特に東日本はまだまだ未開拓な場所なのでたくさんありますよ!
    気仙沼の市場のサメを生で見たり、北陸や駿河湾の深海魚を見たり食べたりしたいです。
    釣ってみたいのは沖縄でヒラアジの仲間や霞ケ浦のアメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)、横浜のダイナンアナゴです。
    魚種の豊富な八丈島で釣ったクサヤモロでクサヤを作って食べるのも面白そうです!
    他にも東北のアワビやウニ(いちご煮とか)、のれそれ、高知の一本釣りウルメイワシ、浜名湖のギマ、小名浜の焼きびたしなど、行きたいところ食べたいものがいっぱいです。
    あと小学生の頃に食べた鮒ずしはにおいが強くておいしくはない…と思ってしまったのですが、高校生になった今、滋賀で美味しい鮒ずしに再チャレンジしてみたいです。
    シイラが好きなのでシイラ釣りか、島根のシイラ漬け漁もやってみたいです!

    ―最近のおさかなライフをお聞かせください。

    毎週魚屋さんや市場で魚を買って、"毎日魚食" をゆるくですが続けています。
    季節の野菜と組み合わせて調理するのも好きで、学校から帰ったら台所で色々作っています。
    最近食べておいしかったのはアイゴの南蛮漬けです。佐伯の水産加工会社やまろ渡邉さんからいただいた急速冷凍のアイゴフィレを南蛮漬けにしたら、風味も良くて調理もしやすくてアイゴの可能性を強く感じました。

    アイゴの南蛮漬け

    クロホシフエダイの炙りと刺身

    ネズミゴチとマアジの天ぷら


    いろんな魚の鯛の鯛

    また魚を食べ終わった後に取っていた特徴的な骨(鯛の鯛)に加えて、魚の頭の中にある耳石も集めるようになりました。
    小さいので採取は大変ですが、魚によって形や大きさが違うのが面白くて不思議だな~と思いながら眺めています。
    バリエーション豊かで可愛らしいので、いろんな鯛の鯛とかを皆で持ち寄って、延々と鯛の鯛トークしたいですね(笑) いずれは本にまとめたり、活用したいと思っています。

    アナゴの耳石を研究されていた桝太一さんにお会いした際に、耳石を薄ーく切るのがすごく難しかったことなど色んな話を聞くことが出来て、そういう研究も面白そうだなとワクワクしています。

    昨年、「環境DNA学会九州大会・公開シンポジウム」や「全国アマモサミット 2023 in ふくおか」などに参加させていただき、魚の()む海の中のことにも興味が出てきて考えることが多くなりました。
    春になって、潮干狩り(マテ貝)やキス釣りによく海に行きます。釣りや磯遊びが出来るのも、海の自然が守られているからなので、それがずっと続くように海を守る人でありたいです。(くだ)けて回収しづらくなる前に「形あるうちにゴミを拾う」ことを心掛けて、海や川に行った時だけでなく学校帰りにも見つけたら拾うようにしています。

    キス釣り・ブラクリでカサゴ

    大神弘太朗先生・桝太一さん : アマモサミット’23


    友達と川遊びのガサガサをするようになり、海水魚とはまた違う淡水魚の魅力(見た目や味)にもハマっています。今飼育しているのは二ホンウナギ、ヤリタナゴ、モツゴ、ヤマトシマドジョウなど、海水魚はオオモンハタやアカオビシマハゼで、どれも食欲旺盛ですくすく育ってくれて嬉しいです。
    先日沖縄に行った時はミスジテンジクダイやナカハラタナバタウオなどを釣って食べました。
    市場でも南の魚にたくさん出合えて、いっぱい買えて楽しかったです。
    (ちゅ)ら海水族館でジンベエザメのジンタくんを見たり、海中展望塔で魚に餌やりをしたり、海中から観察したりして、やっぱり魚ってかわいいな~と沖縄の海を満喫(まんきつ)してきました!
    次はダイビングで潜ってみたいですね。

    沖縄県那覇(なは) : 第一牧志公設市場


    ―最近、注目していることがあればお聞かせください。

    今興味があるのは、未利用魚や低利用魚とよばれている、漁獲されても選別の段階で売れないと判断され捨てられてしまう魚のことです。実はこれには明確な定義がなく、考えるほどに奥が深い問題だと分かりました。

    ノトイスズミ : 漬け丼・唐揚げに

    人気のマアジも大分県佐賀関の「関アジ」だと超高級魚ですが、定置網に群れで入る10cmほどの小アジは流通に乗らないこともあります。
    瀬戸内地方ではよく食べられているアイゴは、全国的には磯焼けの原因として厄介者(やっかいもの)にされがちです。
    しかし今は廃棄(はいき)せずに加工品にするなど有効利用する取り組みが各地で広がってきていると聞くので嬉しくなりますね。

    カラスミが有名なボラも、江戸時代頃には「たくさん獲れておいしい魚」として人気でしたが、水質の悪化でボラはまずいという認識が定着してしまいました。でも外洋で泳ぐボラはとっても美味しいですし、多くの魚が適切な下処理と料理法でおいしくなる可能性を秘めています。

    ぼくもこれまでたくさんの魚種を食べてきた経験を生かして、多種多様なお魚のおいしさが知れ渡るように、食べてもらえる魚が増えるように頑張りたいです。

    また海外ではこの未利用魚問題はどういう様子なのかも気になります。日本では漁師さんの高齢化や漁獲量減少が深刻ですが、北欧の国ノルウェーでは漁師は人気の職業だそうなので、実際行って調査してみたいですね。

    ―小学1年生からととけん受検を続けていらっしゃる柚貴さんも、ついに高校生。
    今後(将来)の目標、夢をお聞かせください。



    ツバメウオのお造り

    ぼくの現在の夢は、魚と人をつないで、魅力あふれる魚食の世界をもっと盛り上げていくことです。
    これまで魚に関することをたくさんしてきましたが、ぼくはその中でも「魚食」、すなわち魚を食べることが好きです。これからも食べ続けられるようにするにはどうしたら良いだろう?ということを真剣に考えるようになりました。
    魚食文化の継承と未利用魚が「魅了する魚=魅了魚」であることを伝えて魚の価値を上げていきたいです。

    そのためには皆と楽しく魚と遊べることをたくさんやれたらいいなと思います。
    実際に魚を触ったり食べたりできるイベントもやりたいですね。小学生の頃から構想していた珍魚の魚屋さんやレストラン、釣り堀などもある「ととパーク」という魚の施設はいつか本当に作りたいと考えています。

    新しい本も出したいし、魚のセリをネットオークションで行えるアプリ製作なども面白そうですし、特定の対象魚を研究するのも興味があります。
    多くの人に魚を食べてもらえるよう、それら実現に向けて自分に出来ることはなにか、進路も含めて模索中(もさくちゅう)です。

    ヨコヅナマルコバンの骨

    以前、ぼくが入手した長崎県対馬のヨコヅナマルコバンという魚が、実は日本で2個体目かつ種の分布の北限記録だと報告文を発表したのですが、その後出版された「学研の図鑑LIVE魚」という図鑑の分布域に、長崎県が本当に追加されていて感動しました。

    普段から魚の頭を採集していたことで違和感に気づけたのが嬉しかったですし、今後も採集や研究を続けていって、骨で魚種が判別できるような図鑑なども作ってみたいです。
    これまで多くの人が発見・共有してきた積み重ねがあるからこそ、今魚のことが広く知られているので、自分もそれに少しでも貢献できたらいいなと思います。

    大富先生からも「魚だけでなく、一見興味のないことにも触れてみることで、視野が広がるかもしれないし、またそれが魚と結びつくこともあるかもしれないよ」とご助言をいただいたので、これまで()れてこなかった事にもチャレンジしながら、魚食普及活動もこれまで以上に貪欲に取り組みたいと思っています!

    SNSも再始動するので良かったらチェックしてください♪
    【ゆずきのお魚大好き日記】 https://x.com/osakanasuki_yz

    ―最後に、柚貴さんに続く小中学生たちへのメッセージがありましたら。

    ここまで読んでくれてありがとうございます!
    魚の世界はとっても奥深いです。見る、食べる、釣る、さばく、調理、観察、工作、飼育…楽しみ方は無限で、突き詰めると終わりがありません。その一つに魚の美味しさを知ってもらえると嬉しいです。
    魚って知れば知るほど、分からないことや気になることが出てきて…それの繰り返しです(笑)
    ぼくはそれが楽しくて仕方がないです。
    みなさんもワクワクしながら、一緒に魚の世界を「泳いで」みませんか?

    【佐伯 : 刺身盛りの魚種当てクイズ : 正解】
    (4月)ヒラマサ、カツオ、タチウオ、イサキ、ヒラメ、ヒラスズキ、マアジ、イシダイ
    (11月)ブリ、イサキ、ヒラメ、トラフグ、アカカマス、マアジ、アオリイカ、カツオ…でした!