日本さかな検定と向き合い、魚の流通に携わっていることに誇りを持てた。
初挑戦から4年、念願の1級合格を果たされた金沢市場商事(株)の代表取締役社長の青山勝人さんに
お話しをうかがいました。
―おめでとうございます。まずは、1級合格のご感想をお聞かせください。
2019年の不合格から時間が止まっていましたので、2022年の合格で時計の針がようやく動き出した感じです。ひと山越えた最高の気分です。
―手ごたえはありました?
2021年(第12回)が78点で準1級でしたので、その時よりも感触が良かったので多少は手ごたえがありました。
―代表をされている金沢市場商事は、金沢市中央卸売市場の小揚会社とお聞きしていますが、どんな業務をされているのですか?
祖父、父が専業漁師の家で育ち実家も漁業の町、能都町宇出津の市場の横にあり、小さい時から船に乗り漁を手伝っておりました。
その影響で高校卒業と同時に金沢市の中央卸売市場の荷受会社に就職して、42年勤めました。
2022年2月に荷受会社を退任して市場内物流を行っている金沢市場商事株式会社の代表取締役に就任いたしました。
弊社は市場に運ばれた水産物をトラックから受け取りせりを行える状態に配列することが主な業務です。
ところがコロナ禍と不漁で売上が激減しているので、就任と同時に水産物の販売を始めました。
現在は新幹線を使って北陸魚を当日届ける事業と関東の回転寿司に石川の魚を産直として提供しております。その事業のお陰で黒字転換しました。
―水産のプロの方がなぜ、ととけん受検を思い立たれたのですか。きっかけは?
荷受会社の取締役在任中でしたので社員に何かに取り組む姿勢を見せたかったことと、来場者にさかな検定1級としてアテンドするためでした。
―プロの目から、ととけんはどう映っていますか。
市場人にとっては大変有意義な検定です。市場の営業マンが商談の場で魚の知識と全国の魚食文化を把握していることは何よりのアドバンテージであり、バイヤーにも説得力があります。
ただ市場関係者には認知度が低いので、そこをどう上げていくかが課題と思います。
―仕事に役立っていることがあるのでしょうか?
1級の認定をいただいてから販売先の担当者が私の提案や説明をより真剣に聴いてくれるようになり販売成約もふえました。市場内でも魚のことなら「青山博士に聞いたら!」という雰囲気になっております。
―1級合格をめざし、どんな準備をされたのでしょう?
先ずは日々魚に関心を持って生活すること。魚について、わからないことがあればすぐ調べる。
2022年の出題で映画『ドライブ・マイ・カー』で食べられていた魚介は?の問題は当時映画館の中で記憶にとめておりました。
Q1 今年3月の米アカデミー賞で、国際長編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』の原作者・村上春樹に『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』というエッセイがあります。
その中にスコットランドの小さな島で、ある魚介にシングル・モルトをかけるのがこの島独特の食べ方だ、と蒸留所のマネージャーに教わる場面が登場します。欧州でもっぱら生食するこの魚介を選びなさい。
① ウナギ ② カキ ③ タラ ④ ムール貝
―昨年(22年秋)の1級やこれまで受検された出題で印象に残っているものがありましたら。
初めて1級に挑戦した2019年だと思いますが、ローマ時代にシーザーが凱旋帰国したときに振舞われた魚介は?この問題で1級はこんな問題が出るのかと降参しました。
しかし逆にこの問題が私の心に火をつけました。いずれ必ず合格してやる!と。
2019年(第10回 1級)
Q20 皇帝カエサル(シーザー)が凱旋祝宴で6千匹を振る舞い、ローマ貴族の間で養殖池を持つことがステータスだったという細長で獰猛な魚、わが国では南紀で揚煮、土佐でたたきなど、ご当地料理に登場します。この魚介を選びなさい。
① イラブー ② 靭 ③ 太刀魚 ④ 鱧
―昨年は初めてのオンライン受検。それまでの会場集合受検とくらべ、ご感想をお聞かせください。
オンライン受検はリアル受検より諸経費も少なくリラックスして受検できました。
ただ独特の緊張感が無く少し物足りない気分でした。私はアナログ世代ですので「はじめ!」「時間です」と言われないと実力が出にくいです。しかしデジタル世代の方には便利で良いのではないでしょうか。
―全国の魚ファンに伝えたい金沢の魚介や魚料理の魅力は? ご自身のお気に入りは?
金沢市は北と南、東と西のあらゆる魚食文化が融合した街です。そこに北前船の物流と加賀百万石の煌びやかさが加わりました。加賀料理の食とその場の「しつらえ」は全国一と思います。魚介に関しては刺身、特に甘えビは金沢が一番と思います。
―日本各地の魚や郷土料理など、行ってみたいところ、食べてみたいものがありますか?
沖縄へ行って海蛇料理の「イラブー汁」を食べてみたいです。
―最後に同業の市場関係の方々へのメッセージがありましたら。
私は「日本さかな検定」と向き合い魚への流通に携わっていることに誇りを持つことが出来ました。
同時に仕事への情熱も増しました。水産の市場人がととけんにトライすることで人間力が向上します。
それが魚食普及につながり、しいては水産業界の成長に発展するのではないでしょうか。
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