【解答】①青森県大間
【解説】マグロといっても、その種類はさまざま。寿司屋などで使われるホンマグロ(正式名:クロマグロ)やインドマグロ(同:ミナミマグロ)、スーパーなどで売られている比較的安価なメバチマグロやキハダマグロ、回転寿司でよく見かけるビンナガ(同:ビンチョウマグロ)などがある。
なかでも最も旨く、最も高値がつくのが日本近海で獲れる本マグロ。台湾付近が産卵場所で、小型のマグロは太平洋と日本海に分かれ、日本列島沿岸付近を北上する。津軽海峡付近まで北上すると今度は逆に南下を始める。これは餌となるイワシやイカなどを追って動くためだ。
成長した中・大型の本マグロは、サバやイカを追いかけ、今度は太平洋側と日本海側の沖合を北上する。そして津軽海峡に入る群れ、北海道沿岸をさらに北上する群れなどに分かれ、その一部は太平洋を回遊し、アメリカ大陸沿岸まで達するものとみられている。
日本近海を回遊し、時季によって獲れる場所も異なるため、それぞれの味わいにも特徴がある。
津軽海峡では、特に秋から冬にかけて、サバやサンマ、イカをたっぷり食べ、脂がのった大型のものが一本釣りで揚がることが多く、最高級品として知られる。
津軽海峡は意外に狭い。青森・大間の岬に立つと、天気のいい日には18kmほど先の函館が真近に見える。この狭い海は有数のマグロ漁場であり、青森側の大間、三厩、函館側の戸井といった漁港の名がつくマグロはブランド化している。
大間は一本釣りの船が多い。4トン程度の小型の船で荒波に立ち向かい、ときには200kg、あるいは300kg以上もある大物を、文字通り一本の釣り糸だけで揚げる。しかも、数多くの漁船が大物を求め、狭い漁場に密集するのだ。
今は魚群探知機などでマグロの群れを探しながら漁をするが、マグロは釣り糸を見抜き、しかも最高時速100km近い速さで泳ぐという相手である。機械任せで釣れるほど甘くない。海流や海底の地形などを考慮に入れ、マグロの行動を予測しなければならない。
さらに、先回りできたとしても、どの餌―生きたサバやイカを使う―をどのタイミングで入れるか、経験と勘を最大限に活用する真剣勝負だ。
マグロがかかると、それこそ格闘が始まる。1983年に映画化された吉村昭原作の「魚影の群れ」(相米慎二監督、緒方拳、夏目雅子、佐藤浩市出演)のマグロを釣り上げるまでの壮絶な格闘シーンは大間を舞台にしている。
船に引き揚げる際に、電気ショッカーで一瞬にして気絶させ、船に揚げるとすかさず尾を落とし、内臓を外し、脳天と尾から神経を抜く。そして腹に水をたっぷり入れ、船倉の氷の中にしまい込む。
この血抜きと冷やし込みの作業が最も重要だという。マグロは体温がなかなか下がらず、釣り上げたままにしておくと自分の熱で身が焼けてしまう。身焼けすると売り物にはならない。いくら大物を釣り上げたとしても、冷やし込みをきちんとしないと値がつかないのだ。
3億3千万あまりの史上最高値で競り落とされた本マグロは、1月4日午前4時20分ごろ、津軽海峡の竜飛岬沖合1kmの海域で約20分かけ釣り上げられたという。278kgの魚体は4.9トンの漁船の水槽に入りきらず、船上で腹に氷を詰め込んで港に水揚げ。約14時間かけて豊洲に運んだ。
これまでの最高値は2013年の初競りで、やはり大間産の222kgのクロマグロ。1億5540万円(1kg70万円)だった。