【解答】③ハゼ
【解説】私たちになじみの深い釣魚で、とくに東京湾のハゼ釣りは、江戸の昔から有名だ。夏の幼魚は食欲旺盛で、釣り糸にもかかりやすく、初心者でもおもしろいように釣れる。
江戸時代から盛んだったハゼ釣り。これを陸(おか)釣りするのはもっぱら庶民の楽しみで、金持ちは舟を仕立てての釣り三昧(ざんまい)としゃれこんだ。釣ったそばから刺身や天ぷらで食べるのだから豪華な遊びだった。
ハゼは自分で釣って食べる魚といわれ、店頭に出回ることもない。
釣ったそばから揚げて味わう天ぷらは、釣り人の特権だ。隅田川や佃島などでは釣ったハゼをその場で天ぷらにする、はぜ船がいまでも行きかう。
あっさりしたクセのない白身魚で、秋から初冬にかけて、大きく育ちいっそううまみが増す。秋分のころに型が大きく味がよくなるものを「彼岸はぜ」、晩秋から初冬にかけて、産卵のため深場に移動したものを「落ちはぜ」と呼ぶ。
あっさりした白身は天ぷらやから揚げがぴったり。なかでも東京湾でとれるハゼは江戸前ハゼとも呼ばれ、食通に珍重される。
夏などに獲れる幼魚「デキハゼ」という小ぶりのものはから揚げにするのもよい。
この小ハゼは佃煮でもおなじみだ。デキハゼの佃煮は佃島名物。
また、落ちはぜの卵巣を塩漬けにした塩辛は、隠れた珍味だ。
もし大漁だったら、南蛮漬けにしてもよい。揚がったハゼをいったん冷まし、二度揚げをする。季節野菜をたっぷり入れ、酢をきかせた南蛮酢に漬け込めばできあがり。
秋分のこのころに獲れる20cm以上ある大きい活け魚は、刺身や洗いにして非常に美味だ。脂肪が少なく、カルシウムが豊富なハゼは、俗に「お彼岸の中日に食べると中風にならない」ともいわれる。
わすれてならないのが、素焼きにしたあと干して作る「焼きはぜ」。
内臓を取ったハゼを軽く焼いて風干ししたものだ。とてもよいだしがでるため、仙台や山陰の中海地域などでだし取りに使われる。
初夏の①キス、春の到来を告げる②サヨリ。冬場をのぞき味が安定する④メゴチとも江戸前天ぷらになくてはならない定番。