立秋
「洗い」が絶品。味と風格の夏魚
春のマダイ、冬のヒラメとならぶ、夏を代表する白身魚です。暑い夏には氷水で身を引きしめた「洗い」にかぎる、と食通に言わしめるこの出世魚を選びなさい。
①オニオコゼ ②キジハタ ③スズキ ④マゴチ
▼解答と解説コラム▼
【解答】③スズキ
【解説】お盆近くになると築地市場の食通たちが競って好むのが「洗い」。三枚におろした身を薄くそぎ切りして、冷たい氷水にくぐらせ、身を引きしめてから食べる調理法だ。白身がきゅっと縮んで独特な食感。さっぱりとして、なんともいえないコクがでる。
この「洗い」に欠かせないのがスズキ。江戸前の魚、すなわち東京湾の魚のなかで夏魚といえば、風格といい、味といい、右に出るものはいない。東京のスズキがうまいのは、昔から深川の祭りまでといわれてきた。
深川の祭りといえば、勇壮な神輿で知られる冨岡八幡宮のそれで、祭礼は8月15日。
スズキはブリなどとならぶ出世魚のひとつで、生まれてからコッパ、セイゴ、フッコ、スズキと呼び名が変わる。立派に成長し体長が1㍍近くになったスズキは脂がたっぷり。
「洗い」にすると余分な脂がとれる一方、コリコリ感が増し、氷水に浸すから納涼感もたっぷりだ。
繊細かつ淡泊な味わいのスズキは刺身もいい。身がシコシコしているので、薄造りにする。
洗いや刺身のほかにも、夏のスズキは滑らかな舌触りをもち、かつクセがないため和洋中どんな料理にも合う。塩焼きやみそ焼きなどの焼き物、蒸し物、ムニエルなどにしてもおいしい。
夏の白身魚としては、タイやヒラメをもしのぐ味をもつスズキ。
暑い季節に脂がのると、昔から「土用に食えばお灸より効く」とも「絵に描いてなめても薬になる」とも語られた。事実、ビタミンA、ビタミンEのほかカリウムや鉄が含まれ、疲労回復や動脈硬化、骨粗しょう症などの予防にもいいといわれる。
また、夏のスズキの江戸料理のなかに、そうめんをつかった「鱸麺」というのもあり、やはりスズキは夏に似合う魚なのだ。
①オニオコゼ、②キジハタ、④マゴチのいずれも夏の白身魚。