【解答】④マイワシ
【解説】イワシの種類は世界で300種以上といわれ、日本周辺だけでも26種類ある。イワシがニシン科に属すように、実はニシンやキビナゴもイワシの仲間。
私たちの食卓でよく見かけるのはマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、そしてちりめんや釜揚げでおなじみのシラス―カタクチイワシやマイワシの稚魚―だ。
漁獲量もこの順で、ふつういわしといえばマイワシをさすが、目刺しやごまめ、煮干になるカタクチイワシ、丸干しに向くウルメイワシも知っておきたい。
種類によって獲れる時期が異なるが、マイワシは脂がのる初夏から秋にかけて美味となる。とくにこの時期、産卵に備えて大きく育ち、栄養をため込む。
なかでも、梅雨入りのころから水揚げがはじまる、銚子の“入梅いわし"はまるまると太り、口の中で溶けるほど脂のりが抜群だ。
煮ても焼いてもおいしい入梅いわしだが、とりわけ氷水で締め、三枚におろした刺身は絶品で、これまで抱いていたイワシのイメージが覆るはず。そのおいしさには、2つのわけが。
梅雨入りのころ、多くの植物性プランクトンが利根川から流れ込み、銚子沖は「葉っぱ潮」と呼ばれるほど青く染まる。その潮が大量の動物性プランクトンを育み、イワシの潤沢なエサになる。
もうひとつはチームワークによる、高鮮度を保つ漁法にある。
銚子のイワシはおもにまき網漁法で漁獲される。操業は伝馬船という魚群探索船、まき網本船、運搬船が一つのチームを組み伝馬船が魚群を発見すると網船2隻が網を入れる。
群を囲んだ網を少しずつ絞り込んでいき、クレーン利用のたも網で運搬船の水槽に移す。運搬船は水槽に氷を入れ、港に急ぐのだ。
新鮮さが際立つ入梅いわしはまず、お造りで。手早くおろして皮をむいたら、そぎ切りに。しょうが醤油につけて口に運ぶと、ぶ厚い脂が舌の上でとろける。
その刺身をねぎやしそなどの薬味とともにリズムよくたたいて、合わせ味噌で味付けすれば「なめろう」ができる。刺身とはひと味異なり、おもわず酒に手がのびるアテになる。
このなめろうをすりつぶして、しそにはさんだら天ぷらにする。揚げることでイワシのうまみを閉じ込めるのだ。
ところで、イワシは豊漁と不漁を数十年サイクルで繰り返す魚として知られている。最近でいうと1970~80年代は豊漁期。
そして88年に約450万トンの大台にのせるが、それ以降は下降線をたどっていく。一時5万㌧にまで落ち込み、ピーク時の100分1を記録。大衆魚の代表、イワシが“幻の高級魚"になるのでは、と世間を騒がせたのは、つい先ごろのこと。
原因は、気候や海流などの環境変動説、イワシ自体に原因があるとする生物内因説など諸説あり、確定されていない。
今年は大漁が予測されているイワシながら、資源に見合った漁業秩序をつくる視点も大切なこと。26歳で夭折した童謡詩人、金子みすずのような目をもって。
朝やけ小やけだ 大漁だ
大羽いわしの 大漁だ
浜は祭りの ようだけど
海のなかでは 何万の
いわしのとむらい するだろう
「大漁」