立夏
味も満開。魚の王者マダイ
清々しい風が吹き抜ける初夏。江戸時代には、女房子どもを質においてでも食えといわれた旬の味覚が初がつお。その魅力は赤身の澄んだ風味そのものです。
カツオは、はるか赤道付近からこの海流にのり晩春から初夏にかけて、日本にやってきます。この海流を選びなさい。
①親潮 ②黒潮 ③対馬海流 ④リマン海流
▼解答と解説コラム▼
【解答】②黒潮
【解説】回遊魚であるカツオは春、フィリピンの海を旅立ち、イワシなどを追って、晩春から初夏にかけて日本の近海へとやってくる。南九州の沖に姿を現すのが3月ころ。
その後、4月から5月にかけて紀州沖から房総沖へ、さらに7、8月頃には三陸沖から北海道沖まで到達する。つまり、黒潮にのって北上するのだ。
黒潮の始まりは赤道付近。北太平洋の膨大な水と熱をひとつに集め、日本へとやってくる。世界最大のエネルギーの奔流である黒潮のそのすさまじいパワーが日本列島の自然を動かしている。
南から運ばれてきた熱が雲を呼び、雨をもたらす。暖かで湿り気のある命のゆりかご。この列島に生きるものすべてが黒潮の恵みを受けてきた。季節ごとに届く海の神様からの贈りもの、なかでもカツオは“黒潮の子”とよばれる季節の恵みだ。
宮崎県日南市。すぐ沖合を黒潮が流れ、カツオ一本釣りの船が日本で一番多い街だ。2月、“黒潮の狩人”と呼ばれる男たちが旅立つ。3月までは2千キロ南のフィリピン海、次は初がつおを狙い高知沖や銚子沖へ。夏から秋は三陸沖に向かい、冬まで戻れない。
黒潮の流れは日によって年によって大きく変わる。水温や風の動き、潮の変化によって、気の抜けない日々が続く。
脂がのった秋の戻りガツオと対照的に、引き締まった身質を愉しむ初ガツオ。本場と呼ばれる土佐高知はさすがに食べる文化熟度も高く、主に皮目を稲わらの炎であぶることで香ばしくし、赤身の風味を際立たせた土佐造りが好まれる。
薬味は生姜、茗荷、大葉などをたっぷりと。さらにポン酢のかんきつ類も加わり、風薫る初夏の海、山、野の香りと味が口のなかで響きあうようだ。
「鰹は刺身 刺身は鰹」の言葉どおり、鮮度(いき)のいいカツオなら、やはり刺身で食べるのが本命で、今日ではしょうが醤油か、にんにく醤油(またはにんにくのスライス)が添えられるが、江戸時代にはからし味噌が主流だったらしく、古川柳にも
初鰹 銭とからしで 二度泪(なみだ)
などと詠み込まれている。