【解答】②山梨
【解説】アサリの家庭内消費(購入)量日本一は、意外にも甲斐(かい)の国、山梨県。なぜ海を持たない山梨県民がかくもアサリを好むのか。
甲府市の関係者によると、「貝はもともと県内では高級品として扱われて、手に入るのは乾物や煮たものがほとんどで、祭りや祝い事のときにしか食べられなかった。
新鮮な貝があたりまえのように流通する現在でも、山梨県民には貝に対するあこがれがあるのではないか」と推測する。
1日に約5キロのアサリが売れるという甲府市内の鮮魚店では、「ハマグリや赤貝などほかの貝は人気がなく、客の多くが“刺身はマグロ、切り身はサケ、貝はアサリ"と決めている節がある」という。それにしても謎が残る。
ざるの上にとって眺めると、その殻の模様や色の美しさについ見とれてしまう。モダンな幾何学模様にモノト-ンの渋い色合い。
コム・デ・ギャルソン顔負けの素敵なデザインだ。左右で柄が違うところも個性的。さりげなく、こんな“天然おしゃれ"をしているところが憎い。外海のきれいな環境に棲んでいるものほど殻が薄く、斑紋も美しいといわれる。
アサリにはビタミン12、カルシウムのほか、鉄や、コレステロールを下げるタウリンも豊富。、うまみエキスをたっぷり含み、縄文時代から日本人に親しまれてきた。
東京湾がまだ美しい内湾であったころ、下町では「あさぁり、むきみ!」「あさり、からあさりぃ!」という呼び声で売り歩く子どもの声が響きわたり、江戸の朝はあさりの味噌汁で明けた。名物料理といえば「深川飯」。
アサリのむき身をねぎとともに甘辛く、汁たっぷりに煮て、熱い丼飯にかけたもので、下町には必ず屋台が出ていた。
アサリといえば、砂出し。バットにアサリを重ならないように並べ、海水と同じ3%の塩水をひたひたになるくらい入れ、新聞紙などをかぶせて冷暗所で3時間から一晩おいておく。
アサリは日本のみならず、世界中で食べられているが、ヨーロッパでは1960年代半ばにアサリが激減してしまったためにアメリカから輸入し、アドリア海などで養殖するようになった。こう記すと現在の欧州のアサリは米国がルーツのようだが、実はこのアメリカのアサリ、もとをたどると明治時代に宮城県から輸出さ
れた養殖用のマガキに混ざって海を渡り、アメリカとカナダの西海岸で大増殖したものなのだ。
とはいえ、日本も1980年代前半をピークに、漁獲量が大きく減少。一部地域でアサリの養殖も行われるが、多くは自然繁殖に依存している。天然のアサリの出現量は年によって大きく変動する。
本州や九州では春と秋に、北海道では夏にそれぞれ産卵し、生まれたばかりのアサリの幼生は、海中を浮遊し、時には潮の流れにのって100kmも移動することも。2~3週間で、親に近い形の稚貝になると足糸と呼ばれる細い糸で海底の砂にくっつく。
10ミリほどの大きさになると、砂に潜るようになり、25ミリを超えると産卵を始める。
好条件では、それこそ湧くように増えるが、10ミリに満たない稚貝はたくさんいても、20ミリ以上に大きくなる育つ前にいなくなってしまうことが多いという。
ところで、アサリとシジミとハマグリの関係をご存知だろうか。
室生犀星は「アサリのうた」という詩にこう書いている。
おまえのにいさんはといえばハマグリだとこたえる。
そんならシジミは孫かとたずねるとうんという。
きょうだいけんかはめったにしないがアサリもシジミも深い海の中にはついていけない。
にいさんのハマグリだけは、きょうも深いところであくびをしている。
ちなみに、①青森、 ③島根、 ④沖縄はアサリの消費量がもっとも少ない3県である。