【解答】①カマス
【解説】カマス(アカカマス)は夏場の産卵前後を除けばいつでも美味だが、とくにおいしい旬は脂がたっぷりのった大物がとれる秋から冬。
「カマスの焼き食い一升飯」といわれるほど、淡泊で上品ながら脂ののったカマスを焼くと、ごはんが進むこと間違いなし。
身がやわらかく水分が多いカマスは、干物にすると旨みが凝縮されておいしくなる。
カマスの干物はもっともおいしい干物のひとつ。アジなどと異なり頭を残した背開きで作る「小田原開き」は、神奈川県小田原地方の伝統だ。
細長い魚の開きにはこの方法が最適とされ、大きさや脂ののり具合で塩水の濃度を変える、絶妙の塩加減で天日干ししたカマスの開きは極上品だ。
家庭で手軽に作れる「一夜干し」も人気だ。まずウロコを落として開き、内臓を取り出して流水でよく洗う。次に海水程度の濃い目の塩水に20~30分漬けて風通しのよいところで半日、夜から朝方まで干せば、一夜干しが出来上がる。
やわらかい魚なので、皮がはがれないよう丁寧に焼き上げればふわふわになる。
この時季の大きくて鮮度が良いものは刺身にも向き、酢締めもいける。これに目をつけた料理人の間で近年、刺身にすることが流行っている。とくに皮つきのアカカマスの炙りは絶品の味わいという。
小田原の漁師の間では、とれたてのアカカマスをやはり皮つきのままさっと熱湯をかけ氷水でしめる「湯引き刺身」がこの時季の愉しみだとか。
余分な脂が落ち、皮もやわらかく、噛めばかむほど甘みが出るという。
カマスは本州から南の海域に生息し、関東近海では千葉県や神奈川県沖(相模湾)で漁獲される。一般にカマスというとアカカマスのことを指し、別名ホン(本)カマスとも。
やや水分の多いヤマトカマスはミズ(水)カマスともいわれ、アカカマスの半値以下で干物に向く。紀州や四国の「かます寿司」はこちら。
ところで、カマスは美しく繊細にも見える外見とはほど遠く、その実とても獰猛(どうもう)な魚らしい。昔の文献にはこうある。
“鋭い歯で小魚を追い、獰猛、貪欲ぶりを発揮する。憎々しい下あごを突き出している”あんなにおいしいのに、憎々しい、とは少々気の毒にも思えるが、ともあれ大きく裂けた口と鋭く尖った歯が特徴的で、気性がとても荒い海の暴れん坊というのが昔からの定評らしい。
というところから「かます」は攻撃的な意味あいを持たせるために使われる。
‘はったりをかます’‘一発かます’と。