【解答】③サバ
【解説】日本の食卓に欠かせない青魚、サバ。秋真っ盛りのこの頃三陸沖に揚がるサバは、4月頃伊豆半島沖で産卵し、黒潮にのり北上、9月頃北海道沖でたっぷりエサを食べこみ、今度は産卵に備え親潮にのって北の海から下る。
親潮と黒潮がぶつかる三陸沖はエサとなるプランクトンが豊富な国内有数のサバの漁場だ。
日本近海のサバにはマサバとゴマサバがあり、南日本に多い春~夏のゴマサバに対し、マサバは“秋さば、寒さば”の言葉があるように、秋から厳寒にかけてがおいしい時季。
脂ののった秋さばは味わい方さまざま。塩焼き、みそ煮、しめ鯖、竜田揚げ、文化干し…といずれも家庭料理の王道メニューだ。
なかでも、マサバの真骨頂はみそ煮だろう。脂ののったサバにこってりしたみそが見事によくあう。さば以外、みそ煮という料理はあまりなじみがない。日本人の祖先の知恵に脱帽だ。
“さばの生き腐れ”といわれるようにサバは傷みやすいことでも有名。冷蔵保存がない時代、輸送は大変だった。福井県小浜(おばま)から京へと通じる若狭街道70km余りは“鯖街道”と呼ばれ、若狭湾で獲れたさばを塩して行李で担ぎ、徹夜で京へ。
一晩かけて終点につくと、塩加減はちょうどよい頃合いに。
それを酢でしめ、京名物・さばずしが誕生した。
一方、鯖街道起点の小浜にはサバのうまみを知り尽くしたこの土地ならではの郷土の味がある。脂がのったさばを一本丸ごと竹串に刺し、炭火で豪快に焼き上げた“浜焼き鯖”だ。
このほかにも、北陸一帯の名物、鯖の糠漬け“へしこ”や、へしこを塩抜きして米と麹で漬けた“なれずし”、独自の醤油仕立ての干物“おばま醤油干”など固有の鯖文化が小浜に今も根付いている。
サバを読む、という表現がある。生き腐れするほどに鮮度落ちが早い魚ゆえ、目の子勘定(目算)でろくすっぽ数えることなしで流通していた。それで良し、とするほど獲れたが、今は違う。
漁獲制限の対象になるほど漁獲量も減り、高級白身魚をはるかにしのぐ値がつくモノすらある。
その代表格、豊後水道の関さば(大分佐賀関)や岬(はな)さば(愛媛佐田岬)、八戸前沖さば、金華さば(宮城石巻)、松輪の黄金さば(神奈川三浦)といったブランド鯖や新鮮な魚が手に入れば刺身もいいが、生で食べるときはしめ鯖―関西では生(き)ずしといい、これを用いた鯖棒ずしやバッテラが親しまれる―に。