【解答】④秋刀魚
【解説】台風一過で秋本番。青空が広がり、秋風が吹くと、さんまがむしょうに恋しくなってくる。秋刀魚の文字どおり、刀身のようにスリムで銀色に腹を光らせたさんまの大群は、秋の訪れとともに親潮にのって太平洋岸の沖合いを南下する。
その体形から狭真魚(さまな)と呼ばれていたのが訛って‘さんま'になったともいわれる。とはいえ、この時季、たっぷり脂がのり、けっこう肥満体。小さな頭に、力士さながらに肩が盛り上がり、アンバランスなほどウエストも太る。
南下するにつれ、適度に脂も抜けて、食べごろになっていく。
秋刀魚焼く 煙の中の 妻を見に 山口誓子
かつて路地裏では、七輪を持ち出し、ぼうぼう青白い煙をたて、さんまを焼く光景がどこでも見られた。戦後、電灯を使った「さんま棒受け網漁」という漁法が開発され、1960年ごろまでに漁獲量は飛躍的に拡大。
どの家も晩ごはんのごちそうといえばさんま、それを焼く煙がよく火事に間違えられたという。ワタの苦味は格別で、強火でないと生臭さがとれない。
塩焼きが王道のさんまながら、昔ながらの料理法も知っておきたい。フライパンひとつでできる蒲焼きもその一つ。醤油、みりん、酒の味付けでもいいし、市販のうなぎのタレを使って好みで甘く、または辛くすればとても簡単に仕上がる。
さんまの蒲焼きはいわし、うなぎと並ぶ三大蒲焼きのひとつ。
もう一つ、丸ごと食べる「生姜煮」は常備菜として重宝する。材料はさんまと刻み生姜だけのいわば、佃煮だ。酢と水を同量入れてことこと炊き上げる。
骨も内臓も血合いもみんな一緒に食べられ、1週間は冷蔵庫で保存できる、毎日でも食べたい味だ。
かつては漁師の特権だったさんまの生食は、輸送技術と漁師の鮮度管理がもたらした新しい食べ方だ。遠い消費地でも可能になったのは2000年代に入ったころ。
寿司や刺身はもちろん、サラダにカルパッチョ、たたき、なめろう。今のさんま人気を後押ししているのは、こうした生食の広がりだ。新鮮でおいしいさんまの見分け方は、目が澄んでいること、口先が黄色いこと、そして頭が小さく見えるのは身が太っている証拠。
7月初旬に北海道沖で初水揚げの報せが根室からとどき、秋の訪れとともに親潮にのって、大海原を回遊しつつ、太平洋を日本列島に沿う様に南下するさんまの群れ。
ちょうどこの頃から10月ころまでに三陸沖を経て、常磐沖から房総沖へ。11月から初冬にかけて伊豆半島や紀伊半島の沖合いにやってくるころには、脂が落ち、身が引き締まってくる。
伊豆地方の名物さんま寿司や、熊野地方のさんま丸干しにはこの脂がぬけたさんまが向く。
ここ3年不漁のニュースがつづき、今年も出足が鈍く、気をもむ毎日が続く。
選択肢の①~③とも文字どおり、秋の味覚。①秋味はアキ
ザケのこと。②あきあじ、③あきさば。