立秋
夏フグの異名をとる怪魚、登場
産地以外で生ではやや薄い旨みも、熱を通すとがぜん濃厚に感じられ、皮目の風味が強く立つ。加熱調理した方がおいしくなるイカなのだ。
暑い季節には、もち米を身に詰めて甘辛く煮たいかめしで食感を楽しんだり、リング揚げや、イカと里芋、じゃがいもの煮物など、食欲をそそるおかずにしたい。
ところで、漁獲量が多く例年だと一杯200円程度のスルメイカは市場においては肩身が狭い。というのもアオリイカやシロイカ(ケンサキイカ)など料理人の目がいくのは高級いか。でもセレブなイカがかなわないすごい秘密兵器を内蔵している。
スルメイカの足を、だましだまし微妙な力加減で引き抜くと、内臓もスルリとついてくる。そこには茶がかったつやつやとはちきれんばかりの大きなワタ(肝)。見るからに栄養がありそうだ。
利用法としては、塩辛が有名だが、時間をかけて発酵させるとか、そんな手間は抜きにしておいしい。トロリつぶせば、すばらしいソースになり、イカ刺しのソースにする手も。身と同様、ワタは加熱しても美味だ。
ゲソもエンペラ(ひれ)も、身のすべてを炒め、そこにワタをからませたら、もはや調味料なぞ出る幕なしで、複雑微妙な味加減になる。
イカ類は鮮度の見分け方がやさしく、生きているときには透明に近く、水から揚げられると茶褐色になり、鮮度が落ちてくると白っぽくなる。