立秋
夏フグの異名をとる怪魚、登場
砂底にもぐってくらす魚で、背は保護色の砂色、体長40~60cmくらいのものが多い。海底にもぐる魚ゆえの平べったい体型で、ことに頭は平たく、そのためか、「コチの頭は嫁に食わせろ」ということわざがある。
平たくて骨っぽいコチの頭は嫁に食べさせておいしい白身は姑の口に入るという嫁いびりをイメージさせるが、実は反対のことわざも。それが、「コチの頭には姑の知らぬ身がある」というもの。
コチの頭の、とくにほほの身は極上のおいしさというわけで、お吸い物の具にすると味わい深い出汁が愉しめる。
期間限定ながら、握り鮨でも味わうことができるコチは職人泣かせのネタのひとつ。頭が大きいため歩どまりが悪いのだ。数多い小骨を1本ずつていねいに抜かねばならない。
身が硬めなので熟成させる必要があり、その加減にも気をつかう。
岡山にはコチのような歩どまりの悪い魚を工夫してうまく食べる郷土料理がある。‘こちのかけ飯'がそれで、コチをまるごと茹でて汚れを除き、身だけをほぐし取る。
茹で汁に野菜とともにこの身を戻し、醤油で味をつける。これをごはんにかけるとすこぶるおいしくいただける。
高タンパク、低脂肪のコチは夏バテ対策にもおすすめ。ちなみに江戸前天ぷらで有名なメゴチは別の魚だが、マゴチの天ぷらは極上の味とか。