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    ととけんで得た知識は、人生を豊かにする一生の財産

    初のオンライン受検で準1級に合格された中井龍一さん(鹿児島県垂水(たるみず)市)にインタビューしました。



    ―準1級合格、おめでとうございます。まずは、ご感想を。

    1級を目指して挑戦してみましたが、さすがに難関でした。
    でも、運よく準1級の合格ラインにはギリギリ届いて、認定証をもらえてよかったなと思います!

    ―プロフィールをお聞きしてよろしいでしょうか?

    生まれは鹿児島市で、その後父の転勤で県内を転々としていました。
    幼少の頃に過ごした桜島は漁村で、家の道路向かいが海岸で、毎日そこで遊んで、その頃から海の生き物に興味を持ちました。大学は北陸地方にある水産系の学部でした。

    職業は鹿児島県東部の大隅半島にある鹿屋(かのや)市の職員をしています。
    仕事は事務系で、魚とはあまり関係はないのですが。20代の時にスキューバダイビングを初め、県内や宮崎の海で魚や海の生き物たちとたくさんふれ合いました。現在は、天気のいい休日には家族で小アジやキスやアオリイカなどの釣りを楽しんでいます。

    ヒレナガカンパチの群れに遭遇
    スキューバダイビングで

    キリンミノにも 同


    ―ととけん受検の動機は?

    魚のことが好きで、もっと知りたい気持ちがあったこと、そして魚に関する検定試験があることを知ったことです。やはり体系的な知識を得るには「検定試験」を利用するのがいいのではと思いまして。
    私は魚の生態や分類など、"生物としての" 魚については自信があったのですが、ととけんの問題はそれ以外にも魚に関する食文化・伝統文化や漁業の分野も多く、そのあたりはほとんどゼロからのスタートでした。
    でも、勉強してみると本当に日本にはいろんな魚料理があったり、魚にちなんだ祭りや伝統行事があるんだな、と思いました。さらに、日本や世界を取り巻く水産資源の情勢その他諸々の魚に関する知識を得ることができて、本当に自分の世界を広げることができたと思います。

    ―受検歴は?

    令和元年に2・3級を併願しました。
    2級もかなり難しいと思いましたが、何とかギリギリ合格でした(笑)。
    ここまで来たら1級合格まで行きたかったのですが、令和2年は仕事の都合で受検できずでした。
    令和3年にHPを覗くと、その年で最後と知り、ここは是非1級合格で締めくくりたく、頑張ってみましたが、検定当日~佐伯会場で受検するつもりでした~が衆院選の業務と重なってしまい、泣く泣く断念しました。ところが、しばらくしてふとHPを見ると、何とオンラインで復活していることを知りました。
    検定協会の方には本当に感謝です!

    ―印象に残っている出題はございますか。

    昨年22年の1級Q77の「食レポ」出題でしょうか。
    選択肢の4魚種をみて、「んんんんーーー????」という感じでした。

    Q77 青物といわれる魚の食レポです。この描写(びょうしゃ)にふさわしい魚を選びなさい。
    ()けるような薄紅(うすべに)をさした蠱惑(こわく)的な色調のお造りを口にすると、コリコリした歯ざわりのうちに秘めたねっとり舌にまつわりつく(うる)みを感じます。酸味を()びた青背の魚にはまったくないと言ってよい、上品な香り高い風味が鼻に抜けていくのです。
    ① アマダイ  ② サワラ  ③ シマアジ  ④ ブリ

    ―1級合格をめざし、どんな準備をされたのでしょう?

    まずは公式ガイドブックの「からだにおいしい魚の便利帳」、「全国お魚マップ」、あとは副読本等を読み込み、過去問や模擬問題を解いていき、分からなかった部分は再度確認していくという、基本的な方法で準備しました。あとはYahoo!で魚関係のニュースは出来るだけチェックしたり、水産庁の「水産白書」も手もとに置いて、近年の水産業の動向を調べたりしました。

    ―昨年は初めてのオンライン受検。それまでの会場集合受検とくらべ、いかがでしたか?

    オンライン受検は未経験だったので、やはりパソコン設定が心配でした。本当にこれで受検できるのか…と(笑)。会場集合受検と比べてですが、一長一短でしょう。オンラインは自宅でできるので忙しくて遠征が難しい人でも受検できますし、何より旅費がかからないので、お財布には優しいです。
    一方、会場集合受検は、やはり「受検してるな~」という気分になりますし、そして、魚好きの人との何かの出会いもあるかもしれません。そしてやはり一番大きなのは「旅の楽しみ」があるということですね!

    ―ととけんへのご要望、意見がありましたら、お聞かせください。

    魚食文化の普及・啓発のためにも、まだしばらく検定は続けてほしいです…

    ―垂水というとカンパチの養殖で有名ですね。漁協の食堂で地元のブランド「桜勘」を味わったことがありますが、垂水の魚介(料理)自慢をお聞かせください。

    やはり垂水自慢の魚といえば生産量日本一のカンパチです。
    鹿児島県産のお茶を混ぜた餌で育ったブランドカンパチ「桜勘」の刺身もとても美味しいですが、その残りのアラで作る「びんた煮」は、頭の骨まで食べられる柔らかさで、コクがあって本当に美味しいです。

    また、垂水市は深海域のある鹿児島湾に面していまして、100ⅿ以上の海底で網を曳く「とんとこ漁」という漁がおこなわれており、ヒメアマエビやナミクダヒゲエビといった深海性のエビが獲られています。
    これを刺身やかき揚げなどでいただくのですが、甘みが強くて最高です!

    カンパチのビンタ煮

    ヒメアマエビのかき揚げ


    あと、私の勤務する鹿屋市もカンパチの養殖が盛んで、日本一の垂水市に次ぐ生産量を誇っています。
    こちらは鹿屋市にある日本一のバラ園にちなんで、バラの花びらの粉末を混ぜた餌を使って臭みを抑えた養殖が行われ、「かのやカンパチ」のブランドで出荷されています。
    市内でもかのやカンパチを使った海鮮丼や漬け丼、あら煮、そして刺身やカルパッチョなどが楽しめるお店がたくさんあります。個人的には薄く切った刺身を、しゃぶしゃぶのようにさっと湯にくぐらせて、ポン酢やごまだれでいただく、「ぶりしゃぶ」ならぬ「カンパチしゃぶ」が一番のお気に入りです。

    カンパチしゃぶ


    【第12回 1級 Q33】
    養殖魚にはかつて(いき)()のマイワシが与えられていましたが、マイワシの減少、漁場環境の保全等の理由から、現在は半生や乾燥状態の人工餌がほとんどです。さらなる品質向上を目指し、人工餌に様々な工夫が施されますが、市の花であるバラを餌に混ぜて育てているブランド魚を選びなさい。
    ① 伊勢まだい  ② 宇和島サーモン  ③ かのやカンパチ  ④ 九十九島とらふぐ

    ちなみに、あまり知られていないかもしれませんが、養殖ウナギの生産量は鹿児島県が日本一です。
    中でも鹿屋市をはじめ大隅半島は養殖ウナギの一大産地です。温暖な気候とシラス台地で濾過された良質の地下水といった恵まれた自然の中で、一年中安定して良質なウナギが生産されているそうです。

    大隅のうな丼


    ―地元以外に、ご興味のある各地の魚や郷土料理など、行ってみたいところ、食べてみたいものがありましたら。

    以前、佐賀に行ったことがありまして、そこで食べた「呼子のイカ」の刺身は、この世にこんなに美味いものがあったんだ!というほど感動しました。また是非行って食べてみたいです。
    あとは、ととけんで学んだ日本の郷土料理は、私はまだ大部分は食べたことがありません。
    日本全国、行きたいところ、食べてみたいものだらけです(笑)。

    ―最後に、全国の受検者同志の皆さんに、またはこれからととけん挑戦を思い立たれている方々へのメッセージがありましたら。

    ととけんの問題は、対象範囲が広く、また奥が深いもので、3級もなかなか簡単とは言えないかもしれません。でも、それだけ挑戦し甲斐もありますし、何より勉強を通じて魚に関するいろんな知識が得られます。
    得た知識は、人生を豊かにする一生の財産でしょうから…是非合格を目指して頑張ってください。