• 立秋
    夏フグの異名をとる怪魚、登場

    スズキやマコガレイとともに、夏を代表する昔ながらの高級魚です。とくに刺身が絶品で、夏場の関東では活けのものがフグのように食べられています。この時期の船釣りの対象としても人気があり、オスかメスが1匹釣れると必ずといっていいほど、もう1匹釣れるという夫婦仲のいい魚としても知られる、この魚を選びなさい。
    画像提供:玉寿司
    ①アンコウ ②カレイ ③コチ ④ヒラメ

    ▼解答と解説コラム▼
    【解答】③コチ
    【解説】
    夏本番。真夏のカンカン照りが続くころ漁獲されるマゴチ(真鯒)は「照りゴチ」と呼ばれる、数少ない真夏が旬の高級魚。
    薄造りや洗いにもよく使われ、すき通るような白身の肉質は弾力があり、コラーゲンが豊富で上品な脂のりの味わいをもつ。

    また、頭や骨からでる出汁の強さなど、フグによく似た特徴を持つため、「夏フグ」の異名もある。

    同じくゼラチン質に富み、食味も似ていることからフグの刺身(てっさ)並みを意味する「てっさなみ」と呼ぶ人もいる。

    江戸時代には、コイやスズキに並ぶ酒の肴の逸品としてもてはやされた。現在も江戸前ものは健在で、東京湾の内湾にある竹岡や富津(ふっつ)、小柴などから活魚で入荷する。


    砂底にもぐってくらす魚で、背は保護色の砂色、体長40~60cmくらいのものが多い。海底にもぐる魚ゆえの平べったい体型で、ことに頭は平たく、そのためか、「コチの頭は嫁に食わせろ」ということわざがある。

    平たくて骨っぽいコチの頭は嫁に食べさせておいしい白身は姑の口に入るという嫁いびりをイメージさせるが、実は反対のことわざも。それが、「コチの頭には姑の知らぬ身がある」というもの。
    コチの頭の、とくにほほの身は極上のおいしさというわけで、お吸い物の具にすると味わい深い出汁が愉しめる。

    期間限定ながら、握り鮨でも味わうことができるコチは職人泣かせのネタのひとつ。頭が大きいため歩どまりが悪いのだ。数多い小骨を1本ずつていねいに抜かねばならない。
    身が硬めなので熟成させる必要があり、その加減にも気をつかう。

    岡山にはコチのような歩どまりの悪い魚を工夫してうまく食べる郷土料理がある。‘こちのかけ飯'がそれで、コチをまるごと茹でて汚れを除き、身だけをほぐし取る。

    茹で汁に野菜とともにこの身を戻し、醤油で味をつける。これをごはんにかけるとすこぶるおいしくいただける。
    高タンパク、低脂肪のコチは夏バテ対策にもおすすめ。ちなみに江戸前天ぷらで有名なメゴチは別の魚だが、マゴチの天ぷらは極上の味とか。